藻谷浩介 (株)日本政策投資銀行地域振興グループ地域支援班参事役、NPO法人 コンパス地域経営支援ネットワーク理事長。2000年頃より地域振興の各分野で精力的に研究・著作・講演を行う。2010年度より現職。東日本大震災復興構想会議検討部会など公職多数。主な著書に『実測!ニッポンの地域力』『デフレの正体』
 

藻谷浩介さん『地域再生』を語る

本書校正中の藻谷さんを訪ね、東日本大震災&原発事故に見舞われた今、街と暮らしの再生の方向をお尋ねしました。
人口が減っていくこれから、これまであまり考えてこなかった暮らす場所の問題こそ重要だ、どこに住み、どう暮らすのかが問われていると強調されていました(2011年4月8日)。
聞き手:前田裕資(編集部)
 

前田:

 昨年秋に丸一日を使って藻谷先生に講演をしていただきました。もうすぐそれをまとめた本が出版できますが、この時期、この本をどういう人に何のためにお読み頂きたいか、コメントいただければと思います。

○大震災が教えていること

藻谷:

 21世紀が始まってしばらく経ちましたが、まさに日本が、そしてそれに続いて世界が大きな転換期に入っています。たまたまそれを天も承知しているかの如く、大震災の不幸が日本を襲いました。多くの被災された方はもちろん、誰にとっても人ごとではない大きな出来事になっています。今、日本が問われているのは、我われはどのように住んでどういう風に暮らすのかということです。何をして暮らすのかじゃなく、どこで暮らしていくのかまで大きく問われているのです。

 それは、これまであまり考えてこなかった暮らす場所の問題です。どこに何を置くと、何も問題なく幸せに暮らせるのかが問われているのです。

 人口が倍に増えてきた戦後の半世紀は、もう手当たり次第に田んぼをつぶし山を崩し海を埋めて、建物や施設をばらまいてきました。これから先、百年をかけて人口が半分に減ると思われるこの時代に、果たしてどうやってそうしたやり方の手仕舞いをしていくのか。並べ直して、どこに住んでどこで働いてどう暮らしていくのが幸せで楽しいのかを問われる時代になってきたのです。

 人口がどんどん増えていって、収入も増えていき、それが楽しいとする時代は終わりました。これまでに溜めてきた物の中で本当に価値のあるものは何なのか、どうやって子孫に残すのかを考えないといけない。お札の形で残すか。いやそうじゃなくて、物として残さないといけない。でも物だっていつなくなるか分からない。どういう街として残していけばいいのか。

 今回の震災でも、古くからの街が驚くほどの強靱さで残っている場所が多々あります。これは、先祖が我われに残してくれた贈り物なんですね。こういう街をこれからの子孫に残していくために、まさに今がそれを考えて、行動するタイミングなんです。

 人口が半分になった百年後の日本に、非常に美しい田園と、コンパクトシティ&タウンズが織りなす国にしていけるか。そういう気持ちを1人でも多くの人に共有してもらいたいと思います。

○中心市街地の意味

前田:

 今おっしゃったことの中で、町の中心部の持つ意味は今まで以上に大きくなるでしょうか。

藻谷:

 戦後の人口が2倍に増えていく中で、我われは町の中心だけに住んでいられなくなったわけです。中心にはお店とオフィスだけ残して、家はなるべく遠くに移して車で中心部に通いましょうというやり方をしてきたのです。大きい町ほどそういう作り方をしてきましたね。

 ところが、人口がどんどん減っていく時代なのに、75歳以上の後期高齢者だけが全国どこの地域でも増えています。特に大都会で激増しています。そういう方々が住んでいる場所が町の中心部から遠く離れて、近所には病院も店もありません。さあ、どうやって暮らしていこうという深刻な問題になっているのです。

 こういう時代に、中心市街地はどんな役割を果たすべきなのか。店とオフィスが並んでいる状態だけでいいのでしょうか。違いますよね。歩ける範囲に人が住んで、その近くに店もあり、働く場所もあるけれども、それ以上にみんなで集まって交流してしゃべって、ゆっくり時間が過ごせて人と知り合える、病院にもすぐ行ける、そんな空間が必要だということをみんなが感じています。

 ショッピングセンターがあるじゃないかという声があります。しかし、そこは車でないと行けないし、ほとんどの人にとってはそのためにわざわざ行かないといけない場所なんです。しかも、行った以上は何か物を買うことが行動の中心になる。そうじゃなくて、物を買わなくていいんだけれど、歩いていて人と挨拶が出来て、四季折々が感じられるそういう空間がいいんです。人は公園以外にも、賑わっている町中が欲しいんですね。これはそうした町を経験したことがない若い人たちにとっても同じなんです。人間はそういうものを求めるんです。

 これから、みんなが歩いて暮らせる町に住んで、いろんな用が徒歩圏で足りて、いろんな人と交流できる町なか、これを中心市街地に再建できる初めてのチャンスが来るんです。今から50年前にこれを言っても、人口が増えていくという趨勢の中では一蹴される絵空事だったんです。町なかには住めませんでした。

 ようやく町なかに住むことが大都会でも可能な素晴らしい時代に入っていくんです。こういう時代に生きていることを僕らは非常に幸せだと思わなければいけない。そして、こういう時代をどう生かすかを一緒に考え、行動していきましょう。

前田:

 ありがとうございます。

 

『藻谷浩介の地域再生塾(仮称)』予定目次

第1部 地方都市の衰退は景気のせいではない

中心市街地がなぜシャッター街になるのか
・「中心市街地」とはどこか
・中心市街地に必要なもの
・中心市街地(=まちなか)の本質
・お店は「花」。では茎や、根は?
衰退の根本原因は?
・まちなか空洞化の流れ
・衰退の原因に関する三つの罪深き誤解
・空洞化の本当の原因
・まちなかの成立→発展→衰退→消滅
お金がなくても元気な街、お金があっても元気がない街
・まだまだ元気な高知市の中心市街地
・なぜ高知市の中心市街地は元気なのか
・日本で一番裕福な地域の寂しい駅前と商店街
・刈谷市の様ざま努力。だが……
中心市街地は必要か?
・中心市街地が必要な訳
・全国共通の問題点
第1部 質疑応答
・刈谷市民はどこで買っているのか
・郊外出店は雇用を増やすか
・器の力を保持できている町は

第2部 デフレを活かした地域再生の原因療法

人口の増減と商業売上げ・地価の密接な関係
・シルバー津波
・住宅、オフィスの需要が無限にあった人口急増の時代
・売れない時代へ
中心市街地の高地価はいまや妄想
・「容積率を上げると地価が上がる」のウソ
・「都市計画区域の拡大で地域経済活性化」のウソ
・小手先の策では避けられない土地の値崩れ
・土地本位制の終焉を直視せよ
・まずは、賃料を下げて雑踏を守れ
「損をして得を取る」地権者のまちづくり
・容積率より建ぺい率を実現した吉祥寺
・吉祥寺の賑わいの秘密
・佐世保の驚異の人出の訳
・佐世保市の苦悩、壮絶な闘い
・地権者をまちづくりに取り込む闘いが鍵
第2部 質疑応答
・高齢化した町はどうなる?
・とんでもない再開発例〜福岡・浜松
・「容積率緩和」を言い出す人を止めるためのロジック
・埋め立て開発行政の代表、神戸市はどうか

第3部 地価低下時代のまちづくりと、その担い手

まちづくりの最初のステップ
・中心市街地再生はステップを踏んで
・耕しが進んだ群馬県館林(第一、第二ステップのまちづくり)
個人の動きが大きく広がる
・町の若旦那が頑張っている富山市岩瀬浜
・観光・交流で町の意識をかえた村上
・村上の次のステップ、小さなお金による効果的なハード整備
街のまちづくり組織が動く
・長浜まちづくりの今まで
・長浜まちづくり役場の目指すもの
・まちづくりNPOを生んだ神戸新開地
・企業によるエリア・マネージメントの先駆け、神戸旧居留地
地価低下時代の再開発のあり方
・大企業によるエリア・マネージメント、丸の内再開発
・二・九億で実現した高松丸亀商店街の再開発
・丸亀商店街モデルを普遍化できるか
・後に続けるか、沼津市アーケード名店街
・誰が専門家を雇うのか〜飯田まちづくりカンパニー
第3部 質疑応答
・町の再生を支えるファンド、および篤志家について
・パチンコ屋をなんとかしたい
・ボランティアではなく仕事にしないと若者は続かない
・まちづくりNPOは住宅、福祉、そして地権者をつなげ
・高齢社会で求められるまちづくりとは?

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