中国の都市開発と環境デザイン
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今後の中国に対する不安と可能性

 

 中国における政治的な意味での不安と可能性について少しお話したいと思います。


共産党体制

 ソビエト連邦が崩壊して、 共産党体制は崩壊しつつあります。 しかし、 中国では、 確固として共産党が確立され続けています。

 私の中国進出についての心配事は、 逆に共産党が崩壊した時怖いということでした。 しばらくは共産党体制が続いてもらいたいと思っています。


市場経済化

 国際的な流通経済についてはWTOに加盟しましたし、 色々な業種の参入も可能になってきています。 中国において、 資本の論理で世の中が動き出す兆候は、 トウショウヘイ(〓小平)時代から生まれていました。 そして、 江澤民時代を経て、 胡錦涛時代へという流れの中でWTO加盟が実現したわけです。

 つまり、 国際的な経済制度の中で経済交流を行なうことが明言されたのです。 一昨年秋の全国人民代表者会議で、 資本家も共産党員になれるという決定もされました。

 現在、 国営企業の民営化が加速度的に進んでいます。 去年まで国営だった企業が今日は民営企業になっているということもあります。 現在、 中国で一緒に仕事をしている計画設計院も1ヶ月前までは国営企業でしたが、 先月から民営企業に切り替わりました。


信仰の自由

 私はクリスチャンということもあって、 以前から中国におけるキリスト教宣教活動に関心を持ってきました。 信仰の自由は保障されるべきだという意味で変化に興味を抱いてきました。

 中国では「宗教は阿片だ」という考え方の時代が長い間続いていました。 その考え方のままであれば、 もし経済が開かれても人間の心は開けないので、 取引は慎重にしなければならないと思っていました。

 しかし、 2003年春の全国人民代表者会議で温家宝体制が成立し、 国務院の部長クラスの一人にカトリック教会の神父が入りました。 本音は内陸部のイスラム過激派に対する対抗策でしょうが、 このことにより、 信仰の自由が一定保証され、 今後も信仰に対する制約が緩んでくると確信できました。


現在中国の抱える問題

 現在の中国が抱えている問題の一つは沿岸部と内陸部の経済格差です。 沿岸部の上海や山東省や広東省では、 内陸部と比べ物価や収入に大きな差があります。

 二つ目の問題点は共産党の権力構造と幹部の汚職です。

 各企業の上には共産党の書記がおり、 自治体でも市長の上に書記がいます。 極論すると、 市長以下は合議制で決定しても書記がひっくり返してしまうという状況です。 この構造に対する不満が局長クラスで渦巻いているという状況があります。 日本の民主的な組織とは全く異なっており、 それに汚職が加わってくるとどういう事態になるかがひとつの不安です。

 三つ目の問題点は、 都市部における開発競争の過熱化です。 バブルの崩壊までは心配していませんが、 そのスピードは日本の約3倍に思えます。 建築も昼夜決行で工事をしていますから、 あっという間に出来上がります。


貨幣価値の変化

 体で感じていた貨幣価値が、 あるきっかけでガラッっと変わることがあります。

 ご存知のように中国は2008年に北京オリンピック、 2010年に上海万博が予定されており、 それと併行して新幹線や高速道路網の整備が計画されています。 つまり、 日本の高度成長期と同じような歩みを始めようとしているのです。

 私と同じような世代なら分かると思うのですが、 この高度成長期を通ることで、 エラク高いと思っていた1ドルが「なんだ百円なんだ」という認識に変わっていきました。 中国も同じように、 何かのきっかけで為替レートの考え方もガラッと変わっていくような気がします。 為替変動制への移行は、 人口が多いので時間はかかると思いますが、 将来的にはそういう方向になると思います。 金融の自由化も将来的には出てくるだろうと考えています。


報酬をもって帰れるのか

 よく中国について聞かれる質問に「あんたら中国で仕事してもお金は持って帰れるのか」というのがあります。 つまり元をもらっても日本では使えないし、 円やドルで持って帰れるのかということです。

 私は基本的には中国で儲けたお金は中国で使うべきであると考えていますが、 日本でかかった費用は日本に持って帰りたいものですからそうしています。 どうしているかというと、 円かドルの電信で送金してもらっています。

 例えば国際コンペの報奨金などは、 主催者からそういう形で送ってもらっています。 相手先によっては長いときで3カ月後、 早いときは1日で来ました。 相手先の地位や能力によってそれぐらい時間のかかり方に違いが出てきますが、 支払方法については何ら心配することはありません。


デリケートな日中関係について

 また心配事のひとつで日本との関係について言うと、 今の胡錦濤・温家宝体制ではお二人とも親日的な気持ちを強く持っておられると思いますから、 本音では心配ないと思っています。 しかし、 戦後の中国共産党がよって立つ論理が「抗日思想」でして、 共産党を成り立たせる手段として「抗日教育」が田舎の隅々まで行き渡っているわけです。 今、 日中関係がデリケートなことになっていることについては、 残念なことです。

 この前のサッカー・アジアカップでの庶民レベルでのジャパン・バッシングは教育の結果なんですが、 一定レベル以上の中国人は「ああいうことはよくない」とはっきりした認識を持っています。

 そういう背景の中で日本の政治家の靖国参拝問題がたびたびクローズアップされるわけですが、 日本国民全体が政治家と同じタイプだとは思っていませんし、 我々のように中国で真剣にビジネスをやっている日本人に対しては、 一切そういう話題を向けてきません。 むしろ、 同情されているようにも感じます。


一人っ子政策に付いて

 もうひとつの中国の心配事は「一人っ子政策」です。 人口がこれだけ多いものですから、 エネルギーにしろ食料にしろ不足気味なんですね。 その解決法のひとつとして選んだのが「一人っ子政策」だったのですが、 将来的にはものすごい「少子高齢化」が予想されます。 やはり、 一定の政策転換が必要になってくるだろうと思います。


次は巨大プロジェクトの時代

 ご存知の通り、 トウショウヘイさんの時代に開放政策が始まり、 国際流通経済を念頭に置いて中国が動き出しました。 やはり豊かにならないと国際的な勝負ができないということから、 江澤民さんの時に沿海部の開発をどんどん進めていきました。 一例をあげると、 シンセン(深〓)という町は数百人だった町から一気に何百万人が暮らす大都会へと変貌しました。 日本人の目から見ると、 とてつもない開発が沿海部では行われたわけです。 また、 江澤民さんの時代には電力問題が大きくクローズアップされました。 三峡ダムに象徴されるように、 水資源開発に力を注いだ時代です。 沿海部対策と水需要が大きな課題でした。

 そして、 現在の胡錦濤国家主席と温家宝首相の胡温体制に移ると、 WTOへの加盟という動きが出てきました。 時代ごとにはっきりした足跡を残すのが中国の政治家のやり方のようで、 胡温体制の時代には北京オリンピックと上海万博、 新幹線という巨大プロジェクトを完成させるのが国家目標になっています。 と同時に、 経済的にはもう一段進めていく方向が出てくるのではないかと私は思っています。


中国の情報化の鍵

 昨今は中国の先進性についても感じることが多いのですが、 中でも情報化社会への取り組みが進んでいきそうです。 今は海外メディアを各家庭で自由に見ることはできませんが、 おそらくもう少ししたらメディア産業も育ってくるような気がします。

 私の個人的な感触ですが、 天安門事件の整理がもう少し経つとできるんじゃないかと思うんです。 本当の意味での民主化の道をこれから歩むだろうと思います。 天安門事件は若者が自由や正義を求める動きでしたが、 もし彼らの地位を回復することが実現できたら、 胡温体制はものすごくしっかりしたものになるでしょう。 それがうまい形で実現できたらいいと思うのですが……。

 そうすると、 ものすごい数の人間が国際的な情報化社会に一気に接することになってメディア産業がとんでもない発展を遂げることが予想されます。 それに伴ってソフト産業も中国に入り込んで相当な発展を遂げることも考えられます。


モータリゼーション化

 中国は旧と新の混合と説明いたしましたが、 交通事情についてもそれは同様で、 今は自転車・輪タク・乗用車が混在して動いています。 時には荷車をひく牛が混じっていることもあります。 そしてその中で自動車がどんどん増加していて、 今は道路の整備にやっきになっているところです。 こうした交通事情の変化に伴って、 おそらく都市の作り方も変わっていくのではないかと思います。

 今はショッピングセンターの計画をしても、 駐車場は大半が不要だと言われます。 私はそんなとき、 「今は作らなくても、 将来作れるよう隣に敷地を残しておいて下さいね」と言っているんです。 「5年後にはきっと駐車台数が売り上げに比例するようになりますから、 それを忘れないようにして下さい」と。

 駐車台数が売り上げに比例するのは日本のショッピング企画の原則ですが、 今の中国でも乗用車の値段がどんどん下がっていくでしょうし、 道路整備や駐車場整備も進んでいて計画的にモータリゼーション化を進めているようですので、 都市のあり方もそれに合わせて変化していくと思います。


公害問題への取り組み

 公害問題に対する積極的な取り組みも生まれてきています。 例えば、 国家的な命題としては砂漠化への対抗策である「退耕還林」という思想があります。 私たちが中国で国際コンペを提案するときにもこの思想は欠かせません。

 みなさん中国上空を飛行機で飛んでいるときに見かけると思うのですが、 山という山には段々畑が耕されていますよね。 あれをやめて(退耕)、 林に戻す(還林)ということです。 つまり日本風に言うと緑化ですが、 日本よりもずっと真剣にやっているのです。 大気汚染、 水の問題についてもしかりです。


新しい富裕層の増加

 先ほど申し上げたように国営企業がどんどん民営化される中で、 30代、 40代の若い経営者層が続々と出てきています。 私たちのクライアントで2千店舗のショッピングセンターのオーナーの劉董事長さんもその一人です。 この方は広州市の商工会議所の副会頭もされていますが、 全国民営化企業集団の会長もしています。 彼は自家用飛行機で全国を飛び回って仕事をしています。

 そこまでの経済レベルには行かないけれど、 通常の日本人よりレベルの高い人は、 中国沿海部に7千万人ぐらいいると言われています。 ですから日本で言う億ション並みの住宅もすぐ売れると聞きます。 マクドナルドやケンタッキーフライドチキンも日本と変わらない値段でどんどん売れています。 ですから、 日本より遅れているどころか、 ずっと豊かだったりすることもあるのが今の中国なのです。

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