見る環境のデザイン再び
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3 見る環境からの景観計画

 

空間として見ること

 セットバックの距離や建物の高さ、 容積率・建蔽率などによって、 空間の全体像を示すことは難しい。 野田北部地区も、 結局は、 道路に対するセットバックの距離という個別の敷地に対するルールでしかないのです。

 しかし、 景観は道を歩いたときに経験する環境です。

 したがって、 空間を空間として説明することが景観計画の最初のステップであって、 その上で、 個別敷地のルールに置き換えていく方が分かりやすいのではないかと思います。

 

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道の空間の構成要素(出典:紙野桂人『見る環境のデザイン』学芸出版社)
 
 これは『見る環境のデザイン』からの引用です。

 平面で見ると全てまっすぐな道ですが、 沿道に何が建つか、 土蔵でもそれが妻入りか平入りかでその道の景観は変わってきます。

 このような景観のひとまとまりを捉えてみて、 それが一体どのような構成になっており、 どうすればつくれるのかを考えてみようと思ったのが10年前に行った調査のときの気分でした。

道のかたちと道空間
 
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鷹取東と野田北部地区(出典:小浦作成)
 
 鷹取東地区と野田北部地区です。 先ほどの緑でつないでいた野田北部地区の写真は大国公園西側、 長楽町2丁目の路地です。

 西側半分の野田北部地区は地区計画と街なみ環境整備事業で個々の建築物が建て変わることによって、 道を広くしてまちを整えている地区で、 東側半分の鷹取東地区は、 地区計画と区画整理事業で道路をつくっている地区です。

 元々は両地区共、 全く同じように100m街区に細い路地が入っていましたが、 整備手法により道路の幅員が異なってきています。 鷹取東地区の区画整理は、 食い違いの交差点やT字路のような、 元々ある街区の構造を生かした形で設計がされています。 T字路があるということはアイストップができます。 整形の交差点と食い違いのある交差点では風景も変わってきます。

 区画整理屋さんは、 グリッド状に道を通して、 公園をとることがまちの安全であり、 まちのあるべき姿であると考えていたので、 随分文句を言われました。

 しかし、 まちの姿は、 道と建物の関係でできており、 そのような意味ではこの区画整理は従来のまちの姿を維持した形の計画であったと思います。

道と敷地の際の感覚
 
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鷹取東地区と野田北部地区
 
 上の2枚は鷹取東地区、 下の2枚は野田北部地区です。

 この二つの違いは、 道と敷地との際の感覚の違いだと思います。 建て方の問題はありますが、 区画整理を行った鷹取東地区ではラインが明確になっています。

 景観や町並みはこのように見ているのです。 平面図で見ているわけではありませんし、 建物の部分で見ているわけでもないのです。


景観のまとまりの調査

 このようなことを考えてみたいと思い、 約10年前に景観のまとまり調査を行いました。

 景観をどのような単位でみているのかを知りたいと思ったのですが、 それを調べるときには景観のまとまりとしてとらえるのか、 景観の変節点から区切ってとらえるのか、 どちらで調査すべきかと色々な議論がありました。 つまり、 まちを歩いていると、 突然大きなものや違うものがでてきて、 なんとなく場所が変わったという経験をされた方も多いかと思います。 そのような変節点がまちのどこにどのようにあるかを捉えることによって、 景観のまとまりが分かるのではないかという捉え方と、 そうではなく、 普通に歩いていて「この辺りは何か一緒だな」というような捉え方と、 どちらで調査したら良いかという議論です。

 しかし、 私たちが普通に歩いている中で、 記憶に残らないような曖昧な場所はたくさんあります。 したがって、 景観のまとまりとして意識に残った場所を捉える方が良いのではないかということになりました。

 景観のまとまりを平面上に描くという技術が必要なので、 建築の学生を対象としました。

 対象地区は、 大阪のOBPと御堂筋、 神戸の旧居留地です。

 全地区1/2000のスケールで、 A3用紙に入る大きさのエリアとなっています。 エリア内の全ての通りを一筆書きで歩くようにルートを設定しました。

 この調査は、 説明しすぎるとそれに影響されてしまうため、 調査方法についても議論しました。 結局「景観や風景のまとまりと思うところに丸を付けてください」という形にしました。 最後に書いてもらったものを見ながら、 なぜそう感じたのかを聴きとりました。

 

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OBP地区
 
 OBPの場合は、 回答者による差が少なく、 共通して描かれていたのは、 地区中心を南北に通る並木通り、 地区中心の交差点、 西端の広場です。

 図に描かれている矢印は、 そこからどこを見た風景かという意味のようでした。 右図東西の通りの東側の矢印は、 公園を囲む並木のむこうに高層がひとまとまりに見えるそうです。 人によっては、 地区西側のクリスタルタワー付近が挙げられたり、 地区中央のキャッスルタワービル付近が挙げられたりしました。

 

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御堂筋)
 
 御堂筋の場合は、 御堂筋や三休橋筋などの通りを示す人が多くありました。

 地区の西側の魚棚筋では、 北側では緑がつながり、 その先がごちゃごちゃしているため、 ここで変わるという認識が多く見られました。

 御堂筋でも街区ごとに丸を付けている人もいました。 理由を聞くと、 交差点ごとに風景が変わるということでした。

 御堂筋東側は高麗橋3丁目付近に集中していました。 ここには空地があり、 見通しがきくため、 違う風景に感じるということです。

 また太閤下水のところに通っている細い路地も一つのまとまりを作っているという認識が見られました。

 

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神戸旧居留地地区
 
 旧居留地の場合は、 景観のまとまりを描きにくいという意見が多くありました。 理由を聞くと、 約半分の人はまち全体が同じようなイメージに思えるからということでした。 そのような中でも並木の連結は多く指摘されていました。 また、 交差点、 建物、 店なども挙げられていました。

 3地区の調査を通して、 景観のまとまりとして、 どこでも同じように挙げられるものもありますが、 地区による違いも見られました。 また、 人によっては全体をまとまりとして認識する地区もあり、 その中でさらに部分に分けたりと、 様々な認識のされ方が見られました。

景観のまとまりの型
 
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景観のまとまり、空間型と風景型
 
 景観のまとまりと認識された事例を整理すると空間型と風景型に分けられました。

 空間型はさらに街路型、 空地型、 エリア型に分けられました。 街路型は通りや並木のタイプ、 空地型は街区全部や公園のようなスポット的なタイプ、 エリア型は交差点まわりのような少し広い範囲や、 居留地のような地区全体を示すタイプです。

 風景型は、 低層部に同じ要素があることによりシーンにまとまっている低層部要素型、 アイストップ型、 景観を何かの基準で切り取っているフレーム型、 眺望型に分けられました。

まとまりの構造
 空間型について、 まとまっていると感じた理由を言語に分解して、 多変量解析を行った結果、 5つのタイプが抽出できました。

     
     ○空間型のまとまり構造と要因
     ・街路型1:緑/連続
     ・街路型2:建物/同じ/方向性
     ・空地型1:囲まれ/類似・同質感/対比
     ・エリア型1:広がり/イメージ
     ・エリア型2:雰囲気
 
 街路型には緑が連続するタイプと、 建物が同じで、 並んだ時の直線感などの方向性が感じられるタイプがありました。 空地型には、 空地内部と周辺の対比のある囲まれ感によるまとまりがありました。 エリア型は、 OBPの交差点のようにある場所の広がりのまとまり、 旧居留地の地区型のように、 地区全体の雰囲気が一緒というタイプです。 エリア型では物理的な言及が少なくなってきます。

 これらの良し悪しは問題ではなく、 このような景観のまとまりの単位があるのです。 これをベースに、 空間型をうまく計画単位として提案できればよかったのですが、 そこまではできませんでした。 しかし、 このように捉えることによって、 一つのまちの中にも様々な景観の現れ方があることが分かりました。

 そう考えると、 町全体をどこでも同じ建築のルールとして表現できるかということです。 できるのかもしれませんが、 同時に、 長田駅北地区のように環境タイプごとに、 関係性を調節する仕組みも決める必要があると思います。

 現在、 色々なところで、 敷地を越えたルールや街区・通り単位のルールをつくれないかという議論が行われています。 これらの議論が必ずしも、 環境の単位や景観のまとまりの単位から議論されているとは思いませんが、 街区や交差点や道、 路地、 広場を単位にした建築ルールの作り方は、 私自身はこういうところから考えているところがあります。


空間のルールに向けて―海外での取り組み

 最低限、 何を共有化し、 ルール化すべきなのか考えるために、 他の国の地区レベルの空間・景観コントロールを見てみました。

 ドイツではBプラン、 フランスでは2004年の法改正により変更されましたが、 開発地区を対象としたPAZがありました。 これらには、 ボリュームのバランスや配置は示されていますが、 色やデザインなどの細かい基準は書かれていません。 デザインはデザイナーの専権事項であるという考えがあるのです。

 PAZでは、 道と建築の関係について、 最低幅員という考え方があり、 建物の壁面によって道ができるという発想で確保すべき幅員が設定されているところもあります。 また、 Bプランには窓枠や屋根勾配などの細かい基準もあるではないかと思われるかもしれませんが、 ボリューム以外の基準はBプランの法定基準ではなく、 市の条例に基づく基準です。

 イギリスの場合は計画許可制度です。 個々の建築行為に対する計画許可は、 近隣との関係やその場所・位置などの全体像から決められます。

 日本には、 このような相互関係としての空間のルールがありません。

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