文化財保護の新政策「文化的景観」について
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A。 文化的景観保護の背景

 

日本国内の動向

 まず文化的景観が注目されるようになった背景には、 地域に対する注目ということがあったと考えられます。

 個々の地域が持っている絶対的な個性、 固有性のようなものが開発の中でどんどん失われていく中で、 地域資源や地域景観、 地域生態系といったものが注目されるようになり、 それらをどのように保護していくのかが重要なテーマになってきました。

 また、 そういった地域の問題を分析する手法が各学問分野によって確立されていったということが言えると思います。

 たとえば歴史地理学では、 条里制や荘園関連の遺跡などが示す過去の土地利用が、 現在の景観にどのような影響を与えているか、 ということが、 古い地図の分析等で明らかになってきました。 自然科学の分野では希少種の多くがいわゆる文化的景観と言われる土地の中で沢山見られるため、 それを保護するためには生態系全体、 すなわち文化的景観全体の保護を考える必要があるという意見が出てきました。 農村計画学では都市と農村の関係についての研究、 また都市と農村を土地利用の面から一体的に管理するといった研究が進められるようになりました。

 このような各分野での学術研究が注目されてきたということが背景としてあったと思います。


文化的景観をめぐる国際的動向

 次に、 文化的景観をめぐる国際的動向について説明したいと思います。

 皆さんもご存じのように、 世界遺産のなかに文化的景観の概念が1992年に導入されました。 ここでいう文化的景観は三つのカテゴリーに分かれており、 一つは「意匠された景観(Clealy Defined Landscape)」、 二つ目は「有機的に進化する景観(Organaically Evolved Landscape)」、 三つ目は「関連する景観(Associative Cultual Landscape)」と分類されています。

意匠された景観
 最初に挙げた「意匠された景観」は、 人間によって創り上げられた文化的な景観、 デザインされた景観、 極めて人工的な景観を対象としているカテゴリーです。

 具体的な例を挙げますと、 庭園や公園です。 たとえば、 ポルトガルのシントラという町やスペインのアランフェスなどがあります。

 このように、 まさに人間によって文化的に創り上げられてきた景観が一つ目のカテゴリーです。

有機的に進化する景観
 
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「有機的に進化する景観」(ORGANAICALLY EVOLVED LANDSCAPE)−ポー川河口部
 
 二つ目の「有機的に進化する景観」が、 おそらく我が国の文化的景観保護制度に一番大きな影響を与えたと考えられるのですが、 これは農林水産業などの景観や遺跡などの周辺にあって、 これらと一体となって重要な景観を現しているものです。

 有名な事例としては、 フィリピンのコルディレラの棚田があります。

 また、 イタリア・フェッラーラのポー川河口部にある湿地の景観も、 このカテゴリーに入ります。 ここでは自然再生と景観再生事業を行い、 湿地の中に浮かぶ都市や干拓地を再評価することによって、 文化的景観として世界遺産に追加登録されました。

 またフランスのロアール渓谷は、 大河川を中軸としてその沿岸に展開する農耕地等の文化的景観を対象とした事例です。

関連する景観
 そして三番目のカテゴリーは、 もう少し大きなスケールの人間と自然とが生み出していた景観です。 これは特に宗教であるとか、 文学などの芸術活動との関連で捉えることになるでしょう。

 このような事例は日本にもたくさんあると考えられますが、 今後どのような形で保護対象とするのか、 検討課題になってくるだろうと思います。

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