新しい建築の製図


はしがき

 本書の前身は,近畿工高建築連盟(現西日本工高建築連盟)が1952年に刊行した「新らしい建築の製図」に始まる.その後,1957年と1959年に上下巻に分けて刊行した第一次改訂,1976年に上下巻をまとめる第二次改訂,1991年には第三次改訂を行い,約50年間にわたり,工業高校生をはじめ専門学校・短期大学・大学の学生や若い実務者などに幅広く親しまれてきた.しかし,第三次改訂後十余年が経過し,この間,建築基準法・日本建築学会の各規準・JIS建築製図通則・学習指導要領などが改訂され,また,環境問題や高齢化問題などの社会的情況の変化があり,第四次改訂が強く望まれていた.
  本改訂は,本書の前身が十分に練られた適切な課題を用い読みやすくわかりやすいものであったことに鑑み,とりあげる建築物の用途を継承し,全体の構成については若干の修正にとどめた上で,上記の事柄を考慮して全体を見直し,課題内容を一新した.また,図面の表記方法については,国際化を見据え,国際標準化機構(ISO)の規格に基づいて改訂されたJIS建築製図通則に準拠した.
  第1章「製図の基本」では,製図用具の種類と使い方,製図規格,線の種類と描き方,設計データなど,設計製図の基本事項についてまとめ,製図を始めるにあたってひと通り学習できるようにし,第2章以降を学ぶ中で疑問が生じたときは,本章に立ち返って再確認できるようにした.
  第2章「木造図面の描き方(1)」では,はじめて建築物の製図を行うことに配慮し,平家建専用住宅をとりあげた.プランは単純化して描きやすいものとするとともに,各図面の表示事項および描く手順を2色刷により示した.また,構法は木造在来構法とし,各部の解説図を多用して,理解しながら描けるようにした.
  第3章「木造図面の描き方(2)」では,アトリエをもつ2階建専用住宅をとりあげた.吹抜けを中心とする明快なプランとすることにより,平面を読み取りながら製図を進めることによって設計力の向上も図れるようにした.構法には,屋根と外壁の通気構法や面材による耐力壁貫構法などを採用し,各構法の解説図によって理解が深められるようにした.
  第4章「鉄筋コンクリート造(ラーメン構造)図面の描き方」では,コミュニティセンターをとりあげた.はじめて鉄筋コンクリート造図面を描くことに配慮し,建築物の規模を抑え,各図面について描く手順を示した.また,意匠図および構造図をひと通り揃えることにより,図面相互の関係について理解を深めることができるようにした.
  第5章「鉄筋コンクリート造(壁式構造)図面の描き方」では,コミュニティを重視したタウンハウスをとりあげた.前章と同様に描きやすさを重視して小規模としたが,住戸タイプに変化をもたせ,住戸内の各室配置についても学ぶことができるようにした.
  第6章「鉄骨造図面の描き方」では,ショールームのある事務所をとりあげた.はじめて鉄骨造図面を描くことに配慮し,機能を損なわない最小の規模とし,短時間で一連の図面を描くことができるようにした.プランは,客の動線と社員の動線を明確にしており,動線計画についても学ぶことができるようにした.
  第7章「投影図法とレンダリング」では,アイソメ・アクソメや透視図の基本図法を解説するとともに,第2章〜第6章の建築物を課題としてとりあげ,外観または内観を着彩して示すことにより,他の章の図面の理解に役立つように配慮した.
  また,巻末の付録においては,二級建築士試験図面例,建築確認申請図面例,プレゼンテーションの図面例を示した.
  以上のように,本書は,建築製図の教材として十分な機能を備えたものであるが,同時に,構造,計画,意匠の教材としても役立てることができる.また,図面の描き方は手描きを前提にして記述しているが,各課題はCADの図面例として用いることもできる.本書は,教育現場で実際に設計製図の指導にあたっている本連盟の会員が編集・執筆を行ったものであり,初めて建築製図を学ぶ人たちにとって最良の教材になるものと確信している.
  最後に,本改訂にあたり貴重な資料のご提供や適切なご助言を賜った皆様,本書の礎を築いていただいた本連盟の先輩諸先生方,並びに滑w芸出版社の京極迪宏社長,吉田隆編集長をはじめ編集部の諸氏に心より御礼申し上げる.

西日本工高建築連盟
「新しい建築の製図」編集委員会