実測術

サーベィで都市を読む・建築を学ぶ


書 評



『建築とまちづくり』(新建築家技術者集団発行) 2001.12
 この数年、新建会員の間で「モダニズム建築を如何に超えるか」が議論されている。ポストモダンの騒ぎが過ぎて、モダニズムの限界とそれを超える確かな方法論がないことを改めて実感したからである。本書の編著者である陣内、中山両氏も都市が近代化されていく現実を目の当たりにし、近代の都市論・建築論に疑問を感じたことが近世以前の町並みサーベイを始めた動機だという。新建での議論もモダニズムの萌芽期や前史にまで遡っているが、近世以前から彼らが何を導き出したかは興味あるところである。
 本書の構成は1966年に当時法政大学の講師だった宮脇檀氏が始めた活動と、70年代後半から海外の都市をサーベイしている陣内ゼミの活動に分かれている。歴史的な流れは、60年代にデザインサーベイが日本に芽生えた状況を簡素に紹介している中山氏の文章と、二人の編著者の対談から理解できる。それぞれの活動はケーススタディとして国内9例、海外14例が紹介され、いずれも短い文章だが現地でのフィールドワークを担当した人々ならではの生き生きしたものである。写真や図面も豊富で、ユニークな都市案内にもなっている。
 これらのサーベイから何が導き出されたのか。事実の記録に力点を置いた宮脇氏は「われわれの作成した図面は半世紀後に役に立つ」と話していたという。失われていく集落の姿を記録し住民に返していくことは保存修復に大きな役割を果たした。さらに陣内氏は、「自然や歴史のストックを魅力的に活かし、眠っている街や地域の個性を引き出し、(中略)環境を形成する時代が到来」しており、サーベイの経験が大きく生かせる、と指摘する。サーベイがまちづくりに具体的に生かされた事例の出現に期待したい。
(K)



『造景』(建築思潮研究所) No.34
 デザインサーベイという言葉を懐かしく聞く中年の設計者も多いに違いない。それほど建築設計を志す者に、この試みは大きな影響を及ぼした。設計者が都市や町、集落を自ら調査し、実作に反映させようとする意欲あふれる試みは、研究者ばかりでなく、専門誌などジャーナルをも巻き込み、一時期、多くの建築専門家の心を捉えた。
 このデザインサーベイの震源地が、法政大学宮脇ゼミである。その活動に影響を受けた研究者の1人が歴史家の陣内秀信さんだ。陣内研究室は、本誌で紹介したアマルフィ(南イタリア)調査だけでなく、世界各地で集落や都市のフィールドワークに従事している。もちろん、建築家と歴史家では同じフィールドワークでも全く方法論が違う。にもかかわらず、出発点でデザインサーベイに影響を受けたと聞くのは面白い。
 その陣内さんが、今は亡き宮脇檀の下でデザインサーベイに取り組んだ中山繁信さんと二人でそれぞれの「実測術」を語り合う。また、実測に参加した担当者による現場のノウハウが盛り込まれていて、読んで楽しい本になっている。


『建設通信新聞』(日刊建設通信新聞社) 2001.10.22
 「建築を知るには実際に建築を見ろ」とよく言われる。本書は街や建築を実測し、調査の中から街の構造や生い立ち、風土との折り合いなどを学ぶ法政大の実践教育を、体感リポートとして紹介したものだ。
 故宮脇檀が主催した7年間のゼミの全貌を紹介するとともに、世界各国で展開する陣内秀信氏のゼミ現況を報告し、「講義や本からは学べない、生きた都市や建築の魅力」を教えてくれる。
 実際に街(環境の中)に飛び込むフィールド調査の面白さ、大切さを「建築を学ぶ学生にメッセージとして伝えたい」と編者の陣内氏は語る。そのため街の全体像や研究成果を報告するというよりも、フィールド調査の参加者がどんな思いで現地に入り込み、何を感じながら調査したかを、個人的な体験を通じて紹介している。
 体感リポートは国内外の街二十数点におよぶ。実測術の題名が示すように、技術的なフィールド調査に焦点を当てている点が特徴。街は建築によって構成、その中に人びとの暮らしがある。実測がその都市や建築を知る重要な手がかりであることを実感する1冊だ。


『學鐙』(丸善梶j 2001.9
 本書第1部は、陣内研究室で学び、イタリア・モロッコ・中国など海外の都市のフィールド調査に参加した人々がそれぞれの体験を報告する。第2部は、1960年代後半から70年代の初めにかけて宮脇檀ゼミが展開した、倉敷・馬籠・五個荘などの集落を実測し図面化して記録する「デザインサーベイ」活動の軌跡を紹介。ケーススタディを通して、実測をともなうフィールドワークの意義と面白さを伝える。


『新建築住宅特集』(叶V建築社) 2001.9
 1960年代から1970年代はじめにかけて、法政大学・宮脇(檀)ゼミでは倉敷・馬篭・五個荘・琴平といった日本の集落を対象にデザインサーベイの活動を繰り広げた。一方、現在同大学で教鞭を取る陣内秀信氏のゼミでは、東京、そしてレッチェ、サルデーニャ、マラケシュ、北京といった海外へとフィールドを広げて調査を行っている。本書は、同じ大学を舞台に活動したこのふたつのゼミの仕事を紹介しながら、フィールド調査の面白さ、その意味を明らかにするもの。調査の参加者たちの個人的な体験談が記されている。実際の建物に触り、空間を感じ、そこに暮らす人たちと交流するという、フィールド調査の魅力が存分に盛り込まれた一冊。



学芸出版社
  • もくじ
  • まえがき
  • あとがき
  • 著者紹介
  • メインページ

    学芸ホーム頁に戻る