マンション 企画・設計・管理

書 評



『地域開発』((財)日本地域開発センター) 2003. 7
 日本におけるマンションの歴史はあまり長くはないが、この半世紀で急速に供給量が増大し、都市住宅の典型の1つとしてその地位を不動のものとしている。この趨勢は今後とも続き、都市居住者の生活変容に対応しつつ多種多様な平面形態、空間構造あるいは設備システム等を持ちつつ定着していくことは間違いないだろう。
 そんな中、マンションに関する多くのハウツーモノや専門書が書店に並んでいるのに対し、マンション実務者からの疑問に応え得る手軽な事典的解説書というものは存在していなかった。
 そこで、本書ではそのニーズに応えるべく、マンションに関して基礎的かつ広範な知識を網羅した内容となっており、大きく(1)企画(2)設計(3)環境(4)ストック活用とマンションの今後の4つから構成され、マンション本体の物的・空間的仕組みだけではなく、どのようにしてマンションが企画・設計されているか、今後のマンションがどうなるかということについて述べられている。

『住宅』 2002. 3
 1998年総務庁住宅統計調査によると、集合住宅は全国の住宅総数の41.9%を占めるまでになり、大都市圏では5割を超えた。いうまでもなく、わが国において鉄筋コンクリート造の集合住宅が本格的に建設されるようになったのは戦後であり、中でも公団住宅が果たした役割は大きい。とりわけ初期の公団住宅は、生活の近代化の象徴として戸建住宅を凌ぐ魅力を備えていた。その後の高度経済成長に伴う全般的な住宅水準の向上や地価の高騰によって、「土地付き一戸建て」が「住宅双六」の上がりと考えられるようになった。そして現在、バブル経済の崩壊を経て、ようやく住まいは「土地神話」から解放されつつある。今後、少子高齢化、小家族化、男女共同参画社会などの一層の進展が予測されるが、このような社会の到来によって、安心して暮らせる共同性および協働性の高い集合住宅や多様なライフスタイルに応じた暮らしが実現できる集合住宅にたいするニーズは一層強まるだろう。また、循環型社会にあっては、長期耐用化、ストック活用、環境負荷の抑制などを配慮した集合住宅が求められる。
 本書は、以上のように都市住宅としてますます重要な役割を担っていく集合住宅について書かれたものである。『マンション』というタイトルがつけられているが、分譲集合住宅に限定したものではない。主として3階建て以上の集合住宅について、供給主体や所有形態を問わず、企画、設計、管理について解説されている。扱われている内容は、住戸・住棟設計、構造・構法、設備、材料、環境などの広範囲にわたり、主としてハード面に焦点があてられている。
 本書を手にとって思うことは、どうして今までこのような本が出版されなかったのだろうかということである。確かに集合住宅に関する本はたくさん書かれている。しかし、それは設計資料集成や事例集のようなものであったり、管理問題など特定のテーマを扱ったものが中心である。本書のようないわば「集合住宅“丸ごと”事典」と呼べるものはほとんどなかった。大変便利な本である。
 本書は主に実務に携わる人々を対象にした入門書であるらしいが、建築学、住居学を学ぶ学生にも是非お奨めしたい。実は、私は現在、大学の設計演習課題で集合住宅を担当している。居住経験があっても、パズルゲームにも似た住戸設計の際に、各部のディテールに無頓着な学生も多い。例えば、玄関の間口寸法がきっちりドア幅しか確保されていないこともしばしばある。こうした事態は集合住宅に限ったことではないのだが、本書では、集合住宅に関して初心者が必ず調べたいと思うディテールが詳しく解説されている。また、本書はマンション管理に携わる方はもちろん、一般居住者にも一読をお奨めしたい。「集まって住む」ためのマナーなどソフト面も重要であることはいうまでもないが、「生活の器」であるハード面の基本的な知識を持ち合わせていると集合の暮らしも随分違ったものになるのではないだろうか。
 執筆者は、都市基盤整備公団関西支社の技術職員およびOBである。公団は1955年に「日本住宅公団」として発足以来、「住宅・都市整備公団」を経て今日まで、大都市圏の住宅供給に重要な役割を果たしてきた。考えてみれば短期間に集合住宅を普及させ、技術的にも日本人の細やかさを活かして様々な集合住宅づくりが進められてきたことは凄いことである。技術的変遷についても触れられている本書は、「公団技術小史」として興味深く読むこともできる。
 都市居住の歴史からすると集合住宅はまだ「駆け出し」の居住形態であり、21世紀には暮らしを一層豊かにするための器へと高められなければならない。装丁は地味だが、本書にはそのための知恵が詰まっている。質の高い集合住宅を追求してきた執筆者17名の自信と誇りが随所に感じられるのは私だけであろうか。
奈良女子大学生活環境学部/助教授 瀬戸章子


『建設通信新聞』(日刊建設通信新聞社) 2001. 10. 22
 「マンションに関する計画から管理まで、実務的な内容について解説する入門書が欲しい」。本書はこうしたニーズにこたえて編まれた。執筆陣は都市基盤整備公団関西支社の技術職員とOBである。マンションを大量に供給、管理する実績をもつ公団技術者による執筆だけあって、日本のマンションの問題点を浮き彫りにしている。
 例えば、住棟デザインについて論じている第3章では、日本のマンションのほとんどは経済性を最優先してきた結果、快適性を損ねていると指摘する。「マンションをデザインする際の拠り所は集住体全体計画の方法論ではなく、エレベーターや消防設備の緩和規定、構造上の住棟長制限、バリアフリー施策だといっても過言ではない」と。これからはアメニティやアイデンティティーの導入が必要だと呼びかけている。








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