コミュニティデザイン
人がつながるしくみをつくる

山崎 亮 著

四六判・256頁・定価 本体1800円+税
ISBN978-4-7615-1286-6
2011-05-01

■■内容紹介■■ 
当初は公園など公共空間のデザインに関わっていた著者が、新しくモノを作るよりも「使われ方」を考えることの大切さに気づき、使う人達のつながり=コミュニティのデザインを切り拓き始めた。公園で、デパートで、離島地域で、全国を駆け巡り社会の課題を解決する、しくみづくりの達人が、その仕事の全貌を初めて書き下ろす。




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読者レビュー
 コミュニティデザイナー、山崎亮氏の活動報告書である。本書の全体が今日の山崎亮氏、あるいはStudio-Lの活動がいかに形づくられたのかを記録するセルフ・ドキュメンタリー的な雰囲気を持っている。公園のデザインや小さな街の総合計画、地方都市のデパートの再生など、プロジェクトごとにドラマがあり、話し合いを続け、解決策を練っていく過程で、コミュニティも、山崎氏も、周囲のスタッフも、少しずつ成長していく様子が活き活きと描かれている。都市やコミュニティ、建築や造園に関わる人たちは、本書を通じて山崎氏が格闘してきた現場の臨場感や達成感を味わい、氏のパーソナル・ヒストリーを追体験することができるだろう。
 山崎氏の自分語りふうにまとめられた本書ではあるが、プロジェクトの様々なドラマの背景を読みこんでいくと、山崎氏はやはり時代の申し子なのだと思う。氏は1973年という団塊ジュニアのピークに生まれ、転校生として全国を転々としつつ育ち、1995年の阪神大震災の経験を転機にコミュニティに関心を持ち、やがてコミュニティデザインという職能に出会う。そのプロセスは、1970年代という開発主義絶頂の時代からポストモダン的な価値の多様化へ、さらに1995年という転機を経て地方分権とともに地方都市のコミュニティがクローズアップされる時代へと至る、日本社会全体の大きな変化のプロセスと完全にシンクロしている。つまり、本書は山崎亮というひとりのデザイナーの歴史であると同時に、時代を語る本でもある。
 ただし、意外と読み方の難しい本でもある。本書では「コミュニティデザイナー」という職業がどのようなかたちで機能しているかというロールモデルは示されているが、誰もが使えるようになるような、いわゆる方法論としては何も示されていない。また、「コミュニティデザイナー」の明確な定義とか、歴史的な位置づけ、批判的な検討など、いわゆる理論的な部分もない。つまり、これを読んだ人がどんなに山崎氏の活動に共感してコミュニティデザイナーを志したとしても、実際にその夢を果たすための具体的な道筋は示されていない。先輩の合格体験記を読んでも志望校に受かるための勉強にはならないのと同じで、本書はコミュニティデザインの体験記ではあっても、教科書ではない。
 本書の後、山崎氏は多様な実践を重ねるとともに自らの職能を理論的に位置づけ、方法論を明らかにする、つまり、教科書を書くという段階に進むだろう。もちろん、山崎氏も推薦書に掲げる『まちづくりの方法と技術 コミュニティ・デザイン・プライマー』(ランドルフ・T.ヘスター/土肥真人, 1997)など、先行例は豊富にあるので、私たちが山崎氏の手によるコミュニティデザインの「教科書」を手にするのも時間の問題であろう。それが編まれていくプロセスで、なぜ今の日本にソーシャルデザイナーが必要なのか、コマーシャルなデザイナーとソーシャルデザイナーの違いは何か、どのようにすれば実際にソーシャルデザイナーの職能を拡大できるか、より多くの議論が巻き起こっていくだろう。
 山崎氏の提唱する「コミュニティデザイナー」を目指すにせよ、異なる職業を目指すにせよ、山崎氏と同じ時代に生きる私たちにとって、本書が今という時代をつかみ、デザイナーという職能、あるいはデザインの役割の今後を考える上で大きなヒントになることは間違いない。若い世代には特に読まれたい。ただし、合格体験記と同じく、読み方には気をつけられたい。
(建築家・東洋大学専任講師/藤村龍至)

担当編集者より

 昨年末から始まった山崎さんとの本づくりは、短期集中型のスリリングな体験でした。
 「今までのまちづくりの本とは違うものにしたい」「(僕の仕事の)どこが面白くて、どこが面白くないかを聴かせて欲しい」と何度となく問われ、それに応えるうちに、目次や口絵諸々、本の形がはっきりしてきました。やりとりをし続けた数ヶ月、とても楽しかったです。
 装丁は、「コミュニティデザイン 山崎亮」と、著者名までがタイトルに見えるものを目指したのですが、実際、この著者だからこその内容が語られていると思います。シンプルで印象的なフレーズも、几帳面な不断の観察があってこそ力を持つ。地域との地道な関わりを大事にする山崎さんの仕事ぶりが伝えられていれば嬉しいです。
(Ino)