歩いて楽しむ京都まちなか
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アンケートから見えてくるもの

ランドデザイン 中村伸之

 

 アンケートでは、 参加者の皆様から貴重なご意見をいただき、 ありがとうございました。

 以下にその記述を整理し、 「都市環境デザインの専門家は京都のまちなかをどう見たのか」を抽出しました。

 この結果は、 地域の皆さんにもお伝えして、 まちづくりの参考にしてゆきたいと思います。


1。 景観・街並み・まち文化に関する記述

 町並みの混乱を指摘する意見もありましたが、 逆に、 歴史と現在が混在することや多様な地域文化への関心も見られました。

 また、 景観以前に車交通が環境を悪化させているという意見も多く、 住民には慣れっこになっている交通問題の重要性が改めて指摘されました。

 

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景観の無秩序、 不統一
 やはり、 新旧建築、 高さ、 壁面線、 色彩などの不統一を指摘する意見が多かった。

 そのような無秩序が活気の無さと相まって、 荒廃した印象を生む。

 対応策として、 全体に統一感をもたらす路面や色彩に対する工夫や、 電線地中化の必要性を挙げる意見もあった。

 「家の中で感じる空気はよかったが、 通を歩くと衰退したまちと感じた」「町家が残っていたり、 すぐ隣に近代的なマンションが並んでいたり・・・」「原色の看板などが目立った」「壁面後退や高さ、 外壁デザイン等、 統一感が乏しく思えた」「ごちゃごちゃしているかんじ」。

京都ブランドの危機を指摘
 景観の荒廃が、 京都ブランドに対する期待と危惧につながる。

 「期待を裏切らないような町であって欲しい」「どこにでもある街と同じになってしまう」「世界に誇れる町であってほしい」。

混在・多様性に対する評価
 一方で「玉石混合」の中に希望を見たり、 まちなか文化の多様性を評価したりする意見もあった。

 「古い町家とマンションが混在しており、 景観を考える上でおもしろい」「新しいものと古いものの融合が魅力」「古い町家または町家のイメージを残していく街区と、 ある程度自由に開発を認める地区を分けた方が良い」「通り毎に特徴があって、 それぞれに楽しい」「普段何気なく通り過ぎている町も、 今日歩いていろんな面がみられた」。

垣間見える歴史や魅力ある店舗
 都市の「歴史」を表出する景観や、 都市の「現在」を表出する魅力ある店舗が、 奥深くて面白い街をつくりだす。

 「歴史的な空間要素が垣間見える感じ」「京都らしいところが見られた」「ゆっくり歩いて立ち止まってみると、 歴史をイメージすることができる」「1軒の店で若い人をひきつける力ともっている」「沿道に老舗がいくつもあるということが、 京都の奥深さ」「他のまちにはない珍しい商売が今でも現役で商売されている」「おいしいものはどこに?」「おもしろいおみせがふえてほしい」。

都市景観の変遷、 都市史への関心
 「歴史の産物」として都市景観を考えたいという意見もあった。

 「次世代に何を残せるか、 10年後どうなっている」「時系列的なまちなみの変化変遷を知りたい」「町や町並みや建築物についての歴史的背景などを知りたい」「時代状況に応じてゆっくり変化していくことを望む」。

景観の成り立ちや社会経済構造への関心
 現在の景観がどのように成立しているか、 という関心もあった。

 「地場産業⇔町家⇔町並みがリンクしている」「空き地、 ガレージがなくなることを望む」「ストリート建築3F以上セットバックというルールでかなりよくなる」「町家のファサードや空間の利用をもっと調べたい」。

車に対する不快感など
 しかしながら、 景観以前の問題として車交通を問題視する意見がかなりあった。

 「歩くには交通量が多過ぎる」「もう少し歩きやすい道にしてほしい(今は自転車や自動車が多すぎ)」「音風景も大切にしたい。 車やバイクがうるさ過ぎて、 落ち着いて静かに鑑賞できない」「もっとみどりの町にしましょう」。


2。 人・暮らし・コミュニティに関する記述

 産業の振興、 歴史文化の継承、 新旧住民の交流など様々な課題があり、 そこから明快なまちづくりのビジョンが描けていないと言う、 指摘がありました。

 

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地元の人の考え方や意向に対する関心
 「まちに住んでいる各個人がまちについて、 何を考えているのか?何を望んでいるのか?」「商いをしている人の意見等もっと聞きたい」「センスとプライドのある住人にがんばって住み続けて欲しい」「三条通はどういう方向を目指そうとしているのか?特ににぎわいを必要としているのか?まちなみを形成したいのか?どういう方向性を住民が目指したい?」。

新旧コミュニティの関係に対する関心
 「地域の人の悩みは、 町の活力のなさ以上に、 新旧、 旧旧住民間のつながりの無さ、 希薄化のように感じた」「地域や学区自治会など、 古くからある“良いもの”をうまく活かせたら」「マンションの新住人の古都とのかかわり方など、 祭りへの参加」「市古さんが、 おっしゃったように、 これから建つ建物、 新しく入ってくる人々が、 1つのまちに(まとまり)共存するようなまちづくりが大切!!」「必ずしも町家を残すことのみを目標をしていないことがわかりました」。


3。 ツアーの進め方に関する記述

 
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 地域の人の解説が役に立ったという意見が多く、 ツアーのあり方に自信がもてました。

 一方で意見交換の方法や、 参加者間の交流に物足りなさがあったという指摘があり、 反省材料になります。 休憩場所やコーヒーブレイクなどゆとりある「町との出会い」にも配慮が必要です。

いろいろな発見があった
 「ちょっと説明を聞くと、 歴史と気配りがぎっしりつまった異空間に見えて楽しかった」「伝統産業、 コミュニティの話は聞いているだけでとても興味深い(どちらもプロだから)」「まちなか博物館、 体験ツアーは、 活性化のひとつの方向だ」「まちのキーパースンを語り部、 案内人としてツアーを組んでいくのはいい方法だ」「普段歩いている道なのですが、 他の人の印象が聞けてよかったです」「解説を聞きながら歩くと、 まちの歴史と様子がわかって面白い」。

リクエスト
 「すずしいお寺の中で瞑想にふけりたい」「町家の中を見学できる所があるとよい→生活の実態が外観からはわからない」「暑くてつかれた、 休憩場所がほしかった」「町家以外の情報が足りないのでは。 姉小路のまちづくりの話が印象深かった」「全国のまちづくり、 NPO、 行政を対象にした研修の場を提供したら良いと思う」「時間が短い。 途中、 茶店などで小休憩があると良い」「昼だけでなく、 夜の景観もやったらよい」。

進行の問題点
 「スタッフの方の紹介があれば、 もっと意見交換が出来たと思います」「何らかの形で事前にモチベーションがあるとより有意義」「グループのメンバーともっと話しあいたいです」。


4。 まとめ

 アンケートや当日の意見交換会の成果を概観して、 「歩いて楽しむ京都まちなか」の魅力や今後のまちづくりについて、 次のように考えました。

(1)まちなかの魅力とは?
 社寺仏閣に代表される「京都らしさ」が厳然として保全されている郊外とは違い、 まちなかは「歴史の垣間見えるまち」である。 「京都らしさが無くなった」という嘆きもあるが、 郊外とまちなかの歴史性のあり方をごっちゃにしてはいけない。 まちなかは、 商工業、 行政、 教育、 交通、 生活など様々な活動がぶつかり合い、 時代の要請に応じて姿を変えてゆく宿命を持つことを認識しなければ現実的な対応はできない。

 ただし、 姿を変えても守るべきものは守らなければいけない。 垣間見える程度の歴史であっても、 諦めずに大切に持ち続けることが、 まちなか文化を豊かにするのである。 今回、 景観の秩序や統一感を求める一方で、 文化的な混在や多様性を肯定的に評価する意見があったことで、 その思いを強くした。

(2)「目利き」の都市ツアー
 現代の中に混在する歴史を「垣間見る」ことを楽しむのが、 「目利き」の都市ツアーである。

 「とっておきの地元話」のディープ情報や、 都市の変遷を物語る「路地」や「風景の裂け目」の発見、 まちなか文化を表出する「魅力ある店舗」、 京都人の生活感など、 様々な知的な刺激がまちなかには無尽蔵にある。

 都市の魅力を鋭敏に感じ取る「目利き」が知的興味の対象を発見し、 その楽しみ方を開発してゆくのも、 まちづくりのひとつの方法であろう。 今回のツアーもそれを狙ったものであり、 今後さらに内容を充実させてゆきたい。

 京都のまちなかは「職住共存地区」と位置づけられているが、 「観光」という側面も忘れてはならないだろう。 職住は地域内部の問題であるが、 観光すなわち外部との文化交流を導入することで新たな価値とダイナミズムが生まれる。 価値というのは内外の落差や時間的・空間的な距離から生じるものである。 アンケートに見るように、 地元にとっては当たり前の情報やモノが、 ビジターには価値があったりする。

 地元の人間にはその価値がなかなか理解できず、 外から指摘されて初めて気付くのである。 ツアーによる交流の意義がここにある。

(3)歩いて楽しむ街のあり方
 また、 歩いて楽しむために街やツアーはどうあるべきかが、 今後の重要な課題である。

 鳴海先生が「歩く目線の面白さ」を指摘したように、 様々な刺激を受け止め、 新たな視線を構築してゆくのが、 まちなか歩きの醍醐味である。 身近な小景観で情報発信してゆけるような工夫を、 住民や事業者が考えるのも良いだろう。

 道路交通の問題を指摘する声が多かったが、 単に物理的な安全性だけでなく、 文化的環境の悪化やコミュニティ空間の貧困化にまで言及していることに注目しなければならない。 車に気を取られていると、 まちなかに垣間見える文化を見逃してしまうし、 騒音で音風景が破壊される。 何よりも歩くことを楽しめない。 かつて通りと町家が持っていた親密な関係(すなわち公と私の空間秩序)も損なわれる。

 ツアーの進行も、 もっとゆとりを持って、 事前の情報提供や休憩や参加者間の会話の機会を増やし、 豊かな時間の共有を目指さなければならないと反省した。

 

 今回は、 専門家の成熟した眼力でまちを評価していただきました。

 十分なおもてなしができなかったにもかかわらず、 意見交換会やアンケートでは心のこもったご意見をいただき、 大変感謝しております。

 次回(?)はさらにグレードアップした旅を提供したいと思いますので、 これに懲りずに、 ご支援を賜りますようにお願いいたします。

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