歩いて楽しむ京都まちなか
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質疑応答

 

 

新旧住民の関係

玄道

 私はBコースで参加しましたが、 今回のまちあるきでは、 沢山のマンションが目に入りました。 そして、 マンションに入ってきた新住民と旧住民との関係で、 様々な苦労をされていると伺いました。

 建築のデザインについての条件の話や、 季節の草花を植えた花壇をつくって、 その界隈の町並みの雰囲気づくりに努力されているマンションの話も伺いました。 また、 祭りなどに積極的に参加するために、 そのまちの住民になろうと努力しているところもあるということです。 そのような新旧住民の関わり方について、 他のAコース、 Cコースでも、 参考になるような事例などあればご紹介いただきたいと思います。

市古和弘(姉小路を考える会)

 逆に、 町内会に入れずに、 新住民の方だけで解決してくださいということもあります。 京都はひとつの町内が、 両側町という特殊なまちの構成になっています。 普通は通りで四角く囲まれた街区がまちですが、 中京や下京は、 通りの両側がまちなのです。 このようにまちのつくりが違うため、 木戸門をつくって町の自治ができたのです。

 このような中で、 相続税が払えないなどの理由で出て行ったところにマンションが建ち、 元々30世帯程度のところに100世帯のマンションが入ってくるわけです。 町内会の中にも社会福祉などの色々な役がありますが、 マンションに入る人には、 必要なことは人にさせておいて、 権利だけ主張する人が多いため、 それでは今までのコミュニティが壊されてしまいます。 そのため、 マンション住民は自治連合会に入れずに勝手に考えてくださいということにしているところもみられます。

 ただし、 最近はマンションをひとつの町内会と見立てて役員を出してもらい、 その人と対等の付き合いをするという方法がとられるようになってきています。 このように、 全てを拒否しているわけではなく、 対等になれたら仲良くしましょうということです。

 しかし、 比較的京都の場合は楽なのかもしれません。 マンションを借りて地元出身の子供世帯が住む、 または、 若い夫婦が店の方へ帰り年寄り夫婦が住むという形で、 地元の何割かの人がマンションに入っています。

 また、 自治連合会では、 町内会対抗の運動会があります。 ずっと負けっぱなしの年寄りの町内に20〜30世帯のマンションが建ったおかげで、 若い人が増え強くなるということもあります。 また、 そのようなイベントを通して、 マンションの中の自治も深められているようです。 このようなことが、 歩いて暮らせるまちづくりのエリア内における、 現在の大きな動きだと感じています。

加茂

 室町通の北の方にある「ローレルコート室町」に住んでいますが、 ここは鯉山町の鉾町ですのでマンションの前に鉾が立ちます。 入居後に分かったのですが、 この場所に135戸のマンションが建つということについて、 旧町内の方が、 色々なことを議論してくれたそうです。

 鯉山町には鉾の保存会があります。 町内の方は皆保存会に入っています。 しかし、 数十軒の町内で135軒のマンション住民が全部保存会に入ってしまうと、 バランスが崩れてしまいます。 そこで、 町内の方が考えられたのは「鯉山友の会」を作るということです。 新住民の中にも、 旧住民と交わりたい、 祇園祭の担い手になりたいという人も沢山います。 また、 町内のために活躍し、 新しいパワーになる人もいます。 マンション住民には、 まずは鯉山友の会に入ってもらい、 その中での活躍が認められた人だけが保存会の会員に昇格できるというシステムが綿密につくられていました。

 このように、 祭りが新住民と旧住民が交わるための媒介となりました。 結果的には、 現在、 マンション住民の数名が保存会に昇格して祇園祭の手伝いなどをしています。

 このように、 私の居住するマンションは比較的旧住民の方と仲良くやらせてもらえているマンションだと思います。

中村

 町内会と山鉾保存会は同じようで別の組織なのです。 町内会はコミュニティの民主的な運営がメインですが、 保存会は財産を持っている財団法人です。 極端な話をすれば保存会の人たちが山鉾を売り払うという議決をすることもできるわけです。 新しい住民が全て保存会に入ると、 どのような決定をされるかわからないという危惧もあるのだと思います。

 このように保存会は、 財産を管理しているという面で、 普通のコミュニティ組織とは異なっているのだと思います。


総合学習のためのツアー

中村

 今回、 町並みやまちづくりの様子をみていただくというツアーを組みましたが、 ツアー自体が一つのまちづくりであるとも考えています。

 2年ほど前から、 修学旅行の中に、 今回のようなまちを見てもらい、 まちの人と交流してもらうというプログラムを設けています。 具体的には、 高校生に2時間ほど町なかを見てもらい、 その後に1時間ほどのワークショップを行います。 そして、 まちに対する感想や京都に住む方の印象などのアンケートを書いてもらっています。

     
     宮城県D高校、 埼玉J高校の皆さんのアンケート(自由記述、 回答項目数344)を下記のようなタイプに分類しました。
     (1)異文化発見型 【自分たちの街とは違う文化や、 今まで抱いていた京都のイメージとは違う面に接したと言う感想】
     (2)人間発見型【地元の人との出会いの感想】
     (3)奥深さ、 リピート意欲型【奥深いからもっと見たい、 また京都に来たいという感想】
     (4)残念型【町並みや車交通に対する否定的な感想】
     各タイプの回答数は下表のとおりです。
    自由記述の内訳(回答項目数)
     
    異文化発見型
    人間発見型
    奥深さ・リピート意欲型
    残念型
    合計
    全般的
    まち
    アイテム
    宮城D高校
    (78名)
    82 (64.5%) 16
    (12.6%)
    26
    (20.5%)
    3
    (2.4%)
    127
    62
    (48.8%)
    12
    (9.4%)
    8
    (6.3%)
    埼玉県J高校
    (141名)
    135 (62.2%) 26
    (12.0%)
    45
    (20.7%)
    11
    (5.1%)
    217
    75
    (34.6%)
    32
    (14.7%)
    28
    (12.9%)
    合計 217 (63.1%) 42
    (12.2%)
    71
    (20.6%)
    14
    (4.1%)
    344
    137
    (39.8%)
    44
    (12.8%)
    36
    (10.5%)

    自由記述のまとめ
     以上の感想から、 高校生の皆さんの印象を次の4点にまとめました。
     (1)街の景観やアイテムに込められたこだわりを通じて、 京都の異文化を実感する
     (2)京都の人のホスピタリティ(おもてなしの心)や文化に対する愛情に触れる
     (3)京都の文化や暮らしの奥深さに気付き、 さらなる知的好奇心からリピート意欲が生まれる
     (4)ただし、 町並み景観の混乱や車が多くて歩きにくいことが、 否定的な印象を生む
 
 これはプログラムに参加した高校生の感想文を整理した報告書の一部です。

 その結果、 似たようなキーワードが出てきました。 「見足りなかった」「奥深かった」などのような漠然としたイメージや、 これまで漠然と抱いていた京都のイメージとは違うという意見です。

 京都人のホスピタリティから言えば「全て教えてあげたい」ところですが、 短時間では難しい。 むしろ、 京都文化の奥深さを垣間見せることで、 「自分たちの町とは違う」とか、 「今までの京都のイメージとは違う」というようなことを感じて書いてもらえたのではないでしょうか。 それだけでも有効だったのではないかと思います。 他にも、 店の着物やコーヒーや漬物など、 具体的なモノから、 京都人のモノに対する愛情や思い入れを読み取れたという意見もありました。 これらが若い人たちの知的好奇心を刺激し、 リピーターを生むのではないかと考えています。

 なお、 このプログラムは、 歩いて暮らせるまちづくり推進会議と立命館大学谷口ゼミとが共同でやっており、 谷口ゼミではこのような取り組みを通じて単位をもらえるという実習の一部でもあります。

 谷口先生の方から簡単にコメントをいただきたいと思います。

谷口知弘(立命館大学)

 ゼミの中でいくつかプロジェクトを立ち上げていますが、 そのひとつとして2年前から、 歩いて暮らせるまちづくり推進会議と共同で取り組んでいるプロジェクトです。

 大学キャンパス内では、 知識、 理論、 技能などはある程度教えることができますが、 社会に出て仕事をしていくうえでの態度や姿勢は教えられません。 そこで、 外に出て、 地域の人と一緒に協働することで身に着けてもらおうという、 大学の学習プログラムでもあります。

 また、 一方では、 小中高で総合学習が取り入れられ、 修学旅行も総合学習の一部に位置づけられています。 その総合学習の一つとして、 今までのように見て回って体験して終わりではなく、 地域の人とのコミュニケーションを通して学び、 考えてもらうというプログラムです。

 2年間実施してきて見えてきたことは、 皆学んでいるのだということです。 大学生も、 高校生も学んでいますが、 地域の方々も学んでいるのだと思います。 このような旅とフィールドワークと学びが一緒になったコンパクトなプログラムは、 相互に学び合う場をつくり、 まちづくりという面から見ても有効に活用していけるのではないかと思います。

 京都には大学が多く立地しています。 京都市の人口の約1割が大学生です。 大学生が京都のまちにどれだけ貢献できるかという点からも、 今後、 大学と地域、 大学と企業がより密接に関係をつくり、 協働していく必要があるのではないかと思います。


町家とみちとのつながり

中村

 景観を専門とされておられる樋口先生から、 コメントをいただきたいと思います。

樋口忠彦(京都大学)

 私は土木出身なので、 道路交通の問題が気になりました。 先ほどの高校生のアンケート結果でも、 交通の混乱が問題とされていました。

 道路と両側の町家を含めた断面・横断構成を見ていく必要があると思いました。 町家がいつの時代にこの形式になったのかを歴史的に見ていくと、 もっとオープンな形式の時代もあったはずです。 例えば、 室町時代の洛中洛外図の特に舟木本を見ると、 町家がオープンな形で都市とつながっています。 そのような原型を目指していく必要があるのではないかと思いました。

 我々の班は寺町通を歩きましたが、 先ほど紹介された古本屋や鳩居堂のようなまちとのつながり方あったはずです。 まちとのつながりが、 他のところでは失われつつあるのだと思います。

 そのために、 全て元通りにしろというわけではありません。 車をどのようにコントロールしていくべきかを考えていかなければならないのだと思います。 特に京都では、 大々的に実験してもらいたいと思っています。

 雑誌「WEDGE」のコラムに、 パリが都心部分から自家用車を全て排除する方向に動いているということが書かれていました。 京都もそのような方向に進めていくべきでしょう。 特に、 田に字地区は重要だと思いますので、 是非そのような方向も議論してもらえればと思います。

中村

 それでは、 時間もきましたので、 今日のJUDIセミナーを終了させていただきたいと思います。

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