中村(ランドデザイン):
ではAコース、 Bコース、 Cコースの順番に、 それぞれ歩いてきたまちの状況とその感想を報告していただきます。 まずAコースから報告します。
Aコース(三条通・本能)
コース概略、ベースはYAHOOより
通りの景観
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中村: 三条新町交差点を南北に通る新町通です。 電柱が両側に立っていますが、 通りを渡る横断電線がありません。 これは祇園祭の鉾が通るからです。 明倫学区のまちづくり委員会は、 より工夫をして、 新町通を「鉾の道」にふさわしい通りにしようと取り組まれています。 今回はこの新町通から堀川通までをフィールドワークしました。
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篠原祥(大阪ガス): 東西方向に伸びる三条通です。 三条通は三条新町交差点の東側までは、 行政が景観形成施策を展開しており、 歩行者通行帯がインターロッキング舗装となっています。 また、 堀川三条交差点の西側は、 アーケードの架かった三条通商店街です。 Aコースでは三条通のうち、 その間にあたる三条新町交差点から堀川三条交差点までの区間を中心に歩いてきました。 この地域も、 以前は店が沢山ある商店街でしたが、 現在は大分寂れています。 概観すると、 約8割が2階建ての鉄骨住宅で、 それがこの通りの景観をつくっているように感じました。 それ以外の2割は3階以上の建物で、 所々に高層建築がありました。 高層建築自体が悪いというわけではありませんが、 壁面線の揃っている中で、 敷地前面が駐車場として使われているため、 違和感が生じているところもありました。
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篠原: 三条通を考えよう会の会長で肉屋を経営されている岡田さんの話では、 京都では数年前に、 セットバックせずに、 道路まで張り出して1階に店舗を入れれば容積が緩和されるという新しい制度もできたそうです(参考文献:『職住共存のまちづくり』)。 中村: この建物は、 その制度によってこのような形になったわけではなく、 15年ほど前に建てられたそうです。 店舗が張り出して、 そこから上がセットバックしているのが、 地元のまちづくりから考えると非常に良いということでした。
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渡邊秀明(LEM空間工房): 三条新町交差点の東側までは地区指定されているのですが、 三条新町交差点から西側に入るとすぐにコンビニがあることには驚きました。 地主さんの意向で建てられているのでしょうが、 まちづくりの枠組みから考えると、 良いのだろうかと感じました。
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加茂みどり(京都大学): 岡田さんの話で最も印象的だったのは、 田の字地区の餡子(あんこ)の部分は低い建物が多いのですが、 堀川通、 御池通に面した部分に高層マンションが1軒建ってしまうだけで、 あんこの部分からの空の見え方が全く変わってしまうということです。 通りを眺めた時に、 本当ならV字に広がるはずの空が、 半分建物で覆われてしまい、 空が見えなくなっています。 中村: 三条通の奥に見えるマンションは堀川通に面しているマンションです。 堀川通に対しては斜線規制があるのですが、 三条通に対してはそれがないため、 垂直に建っています。
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本来の「空がV字に見えている」様子です。
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一方、 小川通から南を見るとマンションが壁のように立ちふさがっています。 小川通は秀吉の時代に作られた道で途中で行き止まっています。 突き当たりにマンションが建ったのです。
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蔵本優(立命館大学): 以前からこの通りをよく通るのですが、 老舗など、 入りにくい店が多く、 あまり客が入っている感じがしませんでした。 それで生活していけているのかと思っていましたが、 商売をしなくても生活していける人が多いという岡田さんの話を聞いて納得しました。 老舗ももう少し改善すれば、 有効に活用できそうな気がしました。 中村: 調査したわけではないので推測にすぎませんが、 昔からのお店は、 今までの蓄えがあり、 また、 自分の持ち家だから気張らなくても生きていけるということでしょうか。 一方では、 成功した店は、 中心部に店を出して、 空き店舗ができるという現象も生じています。 また、 三条通に出てきた新しい店はほとんど商店街組合に入りません。 そのため、 以前は約40軒が加盟していましたが、 現在は数軒に減少しているそうです。
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中村: 老舗のお香屋さんです。 以前と比べると店構えも手を入れて随分若々しい感じになりました。
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昔の歓楽街のなごり |
西側の堀川通に近いところです。 以前はダンスホールや沢山の居酒屋がある歓楽街でした。 歓楽街と言っても堀川通から東側に100m程度のものです。 戦前には、 周辺の染物屋に住み込みで働く職人が多くここに来て飲んでいたそうです。 その名残の建物です。
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馬場染工業 |
Aコース訪問先の馬場染工業さんです。 創業当初は藍染めでしたが、 現在は黒染め一筋の職人さんです。 織物産業の衰退等で仕事がなくなり、 規模を縮小されましたが、 現在は体験プログラムや洋服販売という新しい取り組みもされています。
会場から:
Aコースで歩かれたエリアには古い建物が多く残っているのでしょうか。
山田:
新町から西の一帯は着物関係の職人が多い地域で、 室町や新町は問屋が集まっている地域です。
三条通には、 古い建物はあまり残っていません。 三条通の東の方は、 明治以降に商売の栄えたところなので、 町家などの古い建物は残っておらず、 明治以降の洋風建築が多くなっています。
逆に、 そこから少し離れると室町の問屋街が近いこともあり、 町家の形で商売を続けてきたところが多く、 特に新町通では町家が多くなっています。 通りによって商売の形が異なるため、 建物のタイプやその残り方も異なっています。
少し補足させていただきます。
歩いて楽しいまちをテーマにしていますので、 歩く目線の面白さを伝えなければならないと思います。
歩く目線の面白さ
鳴海邦碩(大阪大学):
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道端の緑です。
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緑の中に歌碑が置かれていました。
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工夫をしている小さな店や古い店が多く、 目を楽しませてくれます。
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先ほどの、 1階部分を張り出し、 2階から上をセットバックした建物です。 局面になったガラスに向かいの建物の瓦の屋並みが映って不思議な雰囲気です。
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店も味わいがあります。 ざるそばと地中海料理の店が並んでいるという、 考えさせられる光景です。 もう店は止めたそうですが、 何年か前まではなかなか面白い組み合わせだったのだと思います。 このような店は楽しんでやってもらえれば良いと思います。
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深い路地の奥にあったものです。
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最近の若い人がやり始めた工夫だと思います。 三条通と西洞院の角に看板を設置し、 南に下っていくと店があります。
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このように、 歩く目線の面白さは色々発見できると思います。 歩く目線の面白さを色々作れば、 あまりお金をかけなくても「歩いて楽しいまち」はできるのではないのかと思います。
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